Review / Object Check

#0004 2026年1月の劇場鑑賞映画 / 明けました

1月いっぱいはお正月モードを引っ張れると余裕ぶっこいていたら、ついぞご挨拶もないまま2月に突入しました。今年もあと11ヶ月頑張っていきましょう。

さて、今年に入ってからは劇場鑑賞映画の感想をスコアとともに言語化するよう頑張ってみているのですが、某所に残しているログは総覧するのに不向きなため、1ヶ月分をここにまとめておこうと思います。

アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし

https://youtube.com/watch?v=34cXWG0q84Q%3Frel%3D0

☆4.0:出来◎ / 偏愛◎ / オススメ◎

「いじわるな義姉妹」の視点から描かれるシンデレラ物語。「本当は怖いグリム童話」なノリで企画自体の新鮮さは薄めだが、非常にテンポ良くなおかつ要所を押さえた演出が心地良い。

王子との結婚を夢見ながらも、その域に遠く及ばない(とされる)女性が主人公。母からの重圧と美しいライバルとのせめぎ合いの中で、健気にも誰かが決めた”美”のために身を滅ぼしていく姿の痛々しさ。ストーリーは想像以上に「シンデレラ」しているが、逆手に”みなさんご存知”パートをばっさりカットするなど巧み。

ルッキズムの戦争に全身をバキバキに改造して挑むようなストーリーかと思いきや、そこは控えめ。とはいえ、「シンデレラ」最大の見せ場へ照準をあわせていちばん痛い描写をぶつけて来るのはさすがのバランス感覚。

撮影やカメラワークの素晴らしさが随所で際立つ。冒頭の妄想から引き戻されるエルヴィラに代表されるようなバウンスしつつズームアウトするカメラワーク、時代背景に比して現代的でそのギャップが良い。過剰なクローズアップや主観視点での針へのピントの合わせ方(イヤなほど繊細)など、ストーリーのテンションと呼応し増幅させてくれるものが多い。

劇中でルックスの振り幅180度、チャームさと美しさと狂気をないまぜに義姉妹エルヴィラ怪演するリア・マイレンが素晴らしい。夢見がちな純粋さと煮えたぎる狂気が同居する感じに『パール』のミア・ゴスを連想。
妹アルマの飄々とした佇まいもとてもクール。この地獄のような世界の中でただただ救いのようなキャラだった。

マッド・フェイト 狂運

https://youtube.com/watch?v=1tlocHFynYU%3Frel%3D0

☆3.5:出来○ / 偏愛◎ / オススメ○

ある事件をきっかけに出会った、「運命を信じながらそれに抗う占い師」と「殺人衝動を抑えきれないサイコパスの青年」。彼らは結託して、殺人を犯して収監される運命から逃れようとするが……。

『トワウォ』のソイ・チェン監督作。まず第一印象、想像していたストーリーと違う!
香港を舞台にした連続殺人事件のサスペンスかと思いきや、話は思わぬ方向へ。拍子抜けしたものの、バディムービー感が漂う前半にはワクワク。
かなり変な映画ではあって、その奇妙さは後半でより炸裂。「殺人衝動を抑えながら、事件の真犯人をバディで突き止める!」みたいなウェルメイドな作風にした方がストーリーとしては面白くなったんじゃないかと思いつつ、後半のまさしく”マッド”な展開こそが、本作を本作たらしめているとも。

また、全編通して美術は見応えアリ。いわゆる「ピンポンマンション」のいかがわしい雰囲気やどう見ても正気でない占い師ホイの住処など。

作品を通して発されるメッセージは力強く、「運命は変えられる!」みたいにポジティブ一辺倒な結末よりも、一歩引きながらそれでも前に進むラストは爽やか。でも、登場人物みんな一回適切なお医者さんにかかるべきだと思う。重箱の隅を突けばお小言も出ようものだが、ヘンな映画は好きなので見逃すとしよう。

マーズ・エクスプレス

https://youtube.com/watch?v=Bbac2I_l-Js%3Frel%3D0

☆3.5:出来○ / 偏愛◎ / オススメ○

フランス産SFアニメーション。人類が火星に進出した未来という大きなスケールの舞台でありながら、ストーリー探偵ノワールものに落ち着くのが面白い。このテのジャンルなら珍しくない展開を見せるので意外性は薄いが、普遍的でありAI時代に沁みるお話。

遠い未来のようで、現実と地続きの生活感があるSF設定が見どころ。特に火星には人工的に再現した「自然な」居住区域が広がっており、これが本作を織りなす人間と人造物の対立構造を体現しているかのよう。やはり目新しさは薄いが、視覚には楽しい。

キャラデザはリアル等身で実在感はあるものの、表情はむしろどれだけミニマルな線で現実のそれをトレースするかというアプローチ。観進めていくうちにクセになる。

見せ場として幾つかのアクションシークエンスが用意されており、これが格好良い。『ターミネーター2』のT-1000を思わせる追手や、実在の生物の捕食行動をイメージしたと思われるクリーチャーなど敵側もユニーク。

PCデスクトップを模した公式サイトや火星パスポート風のパンフレットなど、日本配給宣伝のセンスも光る。

ウォーフェア 戦地最前線

https://youtube.com/watch?v=Jducv8ovVK4%3Frel%3D0

☆3.5:出来◎ / 偏愛△ / オススメ○

イラクにて、アルカイダ幹部を狙撃するため現地の民家を拠点とした米軍特殊部隊。しかし、逆に拠点を包囲され、攻撃により負傷者も。果たして、この惨状から無事に脱出できるのか……。

監督自身がまさにこの部隊の一員で、当時の記録と記憶を元に制作したという。ドラマをそぎ落とし、戦場の模様を事細か且つ主観的にまとめあげており、鑑賞というより体験。逃げ場のない映画館向きの作品。

反面、ドラマを削いだことで劇映画としては評価しづらい。自部隊より外の戦況描写は最低限。全編通して拠点となる民家が舞台のため、密室劇のような様相のシーンも。戦闘が本格化するまでの序盤は少しダレる部分もあるが、この空気感の再現も狙ってのものか。

役者陣の演技はキマっており、やたら声のいいウィル・ポールターや陽気なジョセフ・クインなど、前半のキャラ付けと後半のギャップがうまく呼応する。逆にブレないマイケル・ガンドルフィーニ(D+版『デアデビル』の!)も全編存在感があって、今後も気に掛けたい俳優。

対峙する「敵」は常に遠方にしか映らず、民家を部隊に奪われた家族の存在感も薄め。その辺も当事者のリアルな主観に基づくがゆえで、善悪はさておき素直な作品ではあった。まるで嵐が去ったあとのようなラストカットも印象的。

パルブロス:黙示録の子供たち

https://youtube.com/watch?v=xGlDMFHtnrg%3Frel%3D0

☆3.0:出来△ / 偏愛◎ / オススメ○

パンデミック後のポストアポカリプス世界で、森の奥で身を寄せて暮らす3兄弟。物資に乏しく日に日に追い詰められていく生活、さらには地下室に匿うあるモノに苦悩しながら、どうにか状況を切り抜けようとするが……。

エスバン監督の作風は一貫しており、本作も「自分とは別の存在/役割に成り替わる」ことが描かれる。限界が近い世界の中で、弟たちの親代わりになったり、「子ども」は卒業したり。老いた親の介護、みたいな視点も少しあるのかと。

しかしながら、本作においては「誰がどんな試練を通して変化するのか」といった視点が終始定まらず、結果としてストーリーの強度が保てない。もともとヘンな作品を撮る監督だとは思っていて、そこがまた好き(本作もクリスマスのシーンなんかにそのケが)。しかし、今回は魅力となるようなビザールな展開・画ヅラとは別なところで、中盤以降の展開では特に道筋を見失ったかのよう。

結果的にラストで「え!お前がそのポジションに!?」みたいなよくない方の驚き。ほぼ2時間の鑑賞の果てにあるものとしては、いささか消化不良だ。とはいえあの絵面にこもる意外性と「ヘン」さも思い返すほどに嫌いになれない部分があったりして、やはり魅力的なクリエイターではあるのだった。

キャストは女性陣が魅力的。あまり大きな役ではないが、行きずりのワイルド姉ちゃんを演じるカーラ・アデルは本作における(いろんな意味で)ハイライトとなりましに。母親役のノーマ・フローレスも全編体当たりの演技で、特に回想シーンでの「鬼の形相」は必見のキラーカット。

監督の過去作を知っているとニヤリとできるイースターエッグもいくつか。やはり咀嚼しがいのある作品をこしらえるクリエイターであることには間違いなく、喜ばしいことに長編作品はいずれも日本で視聴できるので、これを機にエスバン監督にハマってみるのもよいのでは。

オベックス 電脳世界

https://youtube.com/watch?v=sTzpC2tpO7I%3Frel%3D0

☆3.0:出来○ / 偏愛○ / オススメ○

舞台は1987年、人物の写真をもとにドットと記号で再現したアスキーアート的な”似顔絵”を製作して、生計を立てている主人公(どういう職業?)。仕事も生活もテレビの前で過ごす自由な時間も、家の中で愛犬とふたりきり。そんな彼が、自分にパーソナライズしてくれるというビデオゲーム”OBEX”をプレイするが……。

自分の記憶や意識を、創作や空想の世界に投影し、問題を克服することで現実での成長も描くような作品は古今東西数多く。本作もその系譜に連なる一作で、ストーリーの構造にこれといった目新しさはない。
しかし、全編を通してのアーティスティックな雰囲気(モノクロの画面に結構誤魔化されている感じはありつつ)や、独特のゆったりとした間合いがクセになる。ゲームの中の世界でふと見上げた空にマウスカーソルが浮かんでいる……といったような、ときどき虚をついてくる奇妙なビジュアルが楽しく。総体よりもパーツ単位で味わうタイプの作品。

肝心のゲーム内の世界がそれほどディテールを詰めたものではなく、意図的ともとれるチープな表現に。先述のような構造の作品である以上、視覚にわかりやすい現実/ゲーム世界の区別があってもよかったのではないかと。
現実の不安や恐怖、思い出を反映したかのようなキャラクターたちは面白いルックスで、鑑賞後にこうしたディテールに込められた意図を想像してみる余地は多い。やはりパーツを楽しむ映画。

「親的な存在にとらわれた”生活”から抜け出し、”外の世界”で自分の人生を獲得する」という構造は、同監督の2010年の作品”The Beast Pagent”と通ずる部分も。監督のウェブサイトを隅々までチェックすると視聴URLが見つかるので、興味があればぜひ。

ランニング・マン

https://youtube.com/watch?v=8qYfJyMNAjM%3Frel%3D0

☆3.0:出来○ / 偏愛○ / オススメ△

1987年『ランニングマン』の当時なりのSF描写やシュワルツェネッガーというアイコニックな主役は、一周回ってエッジが立って見える。比して本作、貧富による分断やディープフェイクによる捏造など画面外の現実に目配せはすれど、努力虚しく現実の方がよっぽど酷い。追い抜かされてしまっている(ランニングだけに)。

インターネットが普及しなかったif世界とでもいうのか、テレビが世論を支配している設定もなんだかもはや虚しくなってくる。もちろん広義の「メディア」を喩えてのものと思うが、どうにも設定時点でノイジーで、核となるメッセージが伝わりづらく。

こういったつくりの作品だと、「本作を楽しむあなたもまた共犯者の観客なのです!」といった問題提起もありうるのだが(本作が全くそこを意識していないということもなかろうが)、全編通してもかなり観客の存在感は脱色され、わかりやすい悪役に責任を集中。一本道すぎやしないかね(ランニングだけに)。

一本道といえば、登場する協力者たちもみなストレートにいい人ばかりで、すんなりと話が展開していくのも物足りず。本作を思い返した時に、あまりとっかかりがなく印象が薄いのはこれが要因かと。反権力でビックリハウス在住のマイケル・セラは生き生きとして良かったけどね……。

最初のお話まで一周してしまうのだが(ランニングだけに)、やはり求めるのはエッジ。エドガー・ライト監督の最新作と聞いて期待していたのはクセのある部分だったのに、なんだか「他の監督が撮っても似たような作品になったのでは」という印象。
果たして企画の時点で、「いまこの時代に」「この座組で」映画化する意味を見出せていたのかはなはだ疑問。ハナからグレン・パウエルを拝むアイドル映画として企画されたのならヨシ。

余談だが、劇中で言外に匂わせる「セレブのリアリティショーはクソ!」というメッセージも(同意はすれど)、手垢がつきまくってるなぁとガッカリ。何年前の話をしているんだ。『ゴッド・ブレス・アメリカ』を観ろ!!!

ワーキングマン

https://youtube.com/watch?v=Fscz9-zbD_8%3Frel%3D0

☆2.5:出来△ / 偏愛× / オススメ△

元軍人で今は現場監督として働く男レヴォン。恩人である社長の娘が攫われ一念発起し、持ち前のスキルで行方を追うことに…。

ステイサム映画に期待することといえばアクション。多少お話が雑でも景気のいいアクションさえ拝めれば許せるのだが、本作とにかくアクションシーンの画面が暗い…。寄りのカットの多さも相まって、「スタントが入ってるのがよっぽどバレバレだったのか?」と疑ってしまうほど。ほとんど何やってるのかわからず、これは非常に残念。

終盤は軽口を叩きながらの肉弾戦もあったりで、「そうそう、こういうのもっと頂戴よ!」と思うも一瞬で終了。煮え切らねぇ〜。

ロシアンマフィアのバカ息子という手垢のつきまくった敵役や消化されないくせに積まれまくる設定、2時間近い尺の長さが気になってしまうのも全部アクションが消化不良なせいだ、きっと。
脇を固めるデヴィッド・ハーバーやマイケル・ペーニャに期待するも、賑やかしレベルの存在感の薄さにこれまた撃沈。

正月恒例になりつつあるステイサム映画、皮肉にもそんなにハマらなかった『エクスペンダブルズ4』や『ビーキーパー』が「アクションは見れたしいい映画だったのかも」と思えるほどに。来年は景気のいいお年賀を期待したいが、いかに。

悪魔のいけにえ 4Kデジタルリマスター 公開50周年記念版

リバイバルなのでスコアはなし。新文芸坐の12/29年末上映でもみた記憶はないので、多分劇場鑑賞は40周年以来ではないか。やはり音の映画なのだと思う。スクリーン越しの事象でも、暴力的な音響は鼓膜を振動し物理的に殺意をぶつけてくるのだ。

ドイツ零年

旧作につきスコアはなし。用事の合間に時間が合ったので駆け込むものの、調べたらアマプラでも配信されていた。貶すつもりはないけれど、配信で事足りたな…。